映画『世界一キライなあなたに me before you』 【ネタバレなし紹介】+【ネタバレ有り感想】
映画『世界一キライなあなたに me before you』
邦題を見て、一体どんな話なんだと思いながらあまり期待をせずに見始めたら、意外にもどっぷりはまってしまった映画です。
重い設定の恋愛ものはあまり興味がない私にしては珍しく、主人公に感情移入してハラハラドキドキしながら見ました。
〈あらすじ〉
お洒落なファッションとおしゃべりが好きなルイーザは、仕事を失い職を探しています。そんな彼女が出会ったのは、事故による後遺症に苦しむ大富豪ウィル。
ルイーザはウィルの世話係として雇われますが、ウィルは心を閉ざしていて、なかなか打ち解けることができません。しかし、明るくユーモアがあり、いつも真っすぐに生きているルイーザと接するうちに、ウィルも次第に心を開いていきます。
ところがある日、ウィルの悲しい決意をルイーザは知ってしまうのでした。
〈見どころ〉
ウィルの決意が私たちに問いかけるもの
見た後にいろいろ考えさせられる名作です。
ラブストーリーというジャンル……なんだろうけれど、どちらかというとヒューマンドラマの色が濃いような。
というのも、「どう生きるか」「自分が何を一番大切に思うか」が、この作品のテーマだと思うから。
ウィルが何を決意し、ルイーザはどうこたえるのか、それが見どころだと思います。
私はこの作品を見終わった時、他の人はこの物語の結末をどう受け止めたのかが知りたくなりました。
見終わった後に、自分なら何を大切に生きていくのかを考えさせてくれる映画です。
ルイーザがとにかく可愛い!
ルイーザという登場人物の魅力も見どころの一つです。とにかく表情が豊かで、独特なファッションも可愛いです。柄物、ビビットな色使い、ヒールのデザインが素敵な靴など、彼女の好みで自由に洋服小物を組み合わせているのが見ていて面白いです。通勤のたびに着ている服が変わるので、とにかく見飽きません。
以下、ネタバレを含む感想です。その点をご了承の上でお読みください。
人を愛するということ
ルーとウィル、主人公たちの交流がとにかく温かくて、相手のことを大切に想っているのが、二人の行動からよく伝わってくるんですよね。
どれだけ深く興味をもって、相手を理解しようとできるか。想いを汲み取って愛せるか。
それを体現しているからこそ、この映画の二人が輝いて見えるのだと思います。
愛し方の違いを浮き彫りにするのが、対照的な男性パトリックという人物ではないでしょうか。
例えば映画デートで、ルーはスペイン語の字幕映画を見てみようと誘うけれど、パトリックは笑って流し、その提案を検討してみることすらしません。
ウィル・フェレルの映画のチケットを購入し、ルーの意見を尊重することはありません。ちょっとは彼女の思いを汲み取ってあげようよ、と言いたくもなる一場面。
(余談だけれど、ウィル・フィレルの映画『俺たちフィギュア・スケーター』を昔、映画館で見たことがあります。
男子二人でフィギュア・スケートのペア部門に出場するというコメディで、突き抜けた面白さがある作品でした。懐かしいなぁ。ルーとパトリックは何の作品を見たのか、ちょっと気になります)
パトリックはルーへの誕生日プレゼントも自分の名前入りのネックレスを渡していて、ルーが何が好きなのか、どうしたら喜ぶか、なんてことは考えていません。
というか、彼の立場からすれば、恋人のルーが仕事にばかり夢中になってしまい、不安だからこそ自分の名前を入れて特注しているのかもしれませんね。
他にも、二人のバカンス旅行と言いながらチームのトライアスロンと兼ねるとか、誕生日パーティーに遅刻してくるとか、ルーを大事にしているとは少し言いがたくて。
彼なりにルーを愛してはいるのだろうけれど……うん、女子目線からするとちょっとズレてる、と思ってしまうところです。
でもそんなパトリックという人物がいるからこそ、ウィルの細やかな心遣いが際立って見えてしまうという演出かもしれません。
心に響いたセリフ
私はルーとウィルの二人が発する、作中で3回登場するあのセリフが大好きです。
「あなたが望むなら」
もちろん、なんでもかんでも、相手の願いを叶えることが愛することではないとわかっています。
でも、この言葉、シンプルに素敵です。純粋に相手の幸せを願う気持ちが込められているのが伝わってくるから。
もう一つ。ウィルの決意を変えられなかったルーが泣いているところに来て、お父さんが言うセリフも涙なしに聞けません。
お父さんが「他人は変えられない」となぐさめ、「じゃ どうしたら?」と自分の取るべき行動を尋ねるルーに告げる言葉。
「愛することだ」
ここでルーは、「愛すること」つまり相手の望みを受け止めることだとしたら、「最期の時を一緒に過ごしてほしい」というウィルの望みを拒絶した自分は、間違いを犯しているのではないか、と気が付きます。
もうウィルの決意が固いのなら、その思いに寄り添おうと、最後まで愛することを決心するルー。
お父さんの言葉がなかったら、ルーは見送れなくて後悔することになったかもしれない。
この言葉があったからこそ、ルーはウィルの望みを叶えることができたと思うと、お父さんのシンプルな言葉がすごく心に響いてきます。
結末について思うこと
ラストは悲しい。直接的にはウィルの死は描かれていないので、画面が白く明るくなってしまうだけなので、死ぬのは嘘なんじゃないか、本当は違うんじゃないか、と思いたくなります。
ウィルが事故に合う前の輝いていた自分の像に囚われて、そこから抜け出すことができなかったことを、意思が弱いと言って責めることは私にはできません。
理想は、困難を乗り越えて生きていくことだけれど、あくまでも理想でしかないし、当事者にしかわからないことはあると思うから。
車椅子の生活だとは言っても、ウィルは財力もあるしできることは色々ある、もっと大変な状況の人も懸命に生きている、だから生き抜くべきだ、とは断言できない。
ふと思うのは、この映画はとにかくウィルが美しく描かれているんですよね。コンサートの時も、アリシアの結婚式の時もかっこいい。
でも、体調面で無理をしながらそういった場に出ているということは、結婚式から帰った後のネイサンとのやり取りから想像がつきます。
ネイサンが「ルーの見えないところでは苦しんでいる」と言うように、セリフとしてぽつぽつと語られるだけで、ウィルが実際どんなに苦悩しているのか、という部分はクローズアップしません。
ウィルの辛い姿を極力描かないようにしているかのようです。寧ろ、わざと苦しみを隠した描き方をして、ルーといて幸せそうなウィルを描いているのでしょうか。
だから、錯覚してしまう。理解ある両親がいて、医療費にも苦労していなくて、愛してくれる女性もいて、こんなにも幸せがあるのになぜ死を選ぶのか、と。
これから先も、幸せに生きていけるじゃないか、と。
ウィルは、矛盾をはらんだ発言もしてます。大学のファッション専攻に通いたかったけれど、家計のために夢を諦めてしまったルーにウィルが言ったセリフです。
「君を見るたび……”可能性”を感じる
視野を広げなきゃ 一度の人生をフルに活用すべきだ」
ルーには背中を押す言葉をかけている言葉は、ウィル自身にも言えること。ウィルだって人生をフルに活用すべきだと、そうできることならそうしたいという思いはあったのでしょう。
自分と同じような境遇の人たちとの交流を拒絶し、頑なになって絶望から逃れられないウィル。
彼にとっての最後の可能性とは、ルーの未来に期待を託すことだったのだろうと思います。
ウィルの父親が息子の意見を尊重してやりたいと言ったように、最終的には家族も、そしてルーも自分の気持ちに折り合いをつけて、ウィルの幸せを尊重することを叶えます。
この映画は、ウィルの救済の物語であり、ルーの再出発の物語だと私は思います。
原作になった小説がある
『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』(集英社文庫)
ジョジョ・モイーズという方が書いたベストセラー小説が原作だということを、見終わってから知りました。
さっそく読んでみたいと思います。